昨今、世間では不動産業に関するネガティブなニュースが飛び交っていますが、財務省「法人企業統計調査」(2019年4~6月期)を確認する限り、不動産業界は依然として好景気と言えるでしょう。同調査によると、不動産業は経常利益1兆5216億円と2期連続で既往ピークを更新し、売上高経常利益率も14.9%と高い水準を維持しています。実はこれはバブル期に最も好調だった1987年4~6月期(経常利益は6,236億円、売上高経常利益率は11.4%)と比べても大幅に良い業績なのです。
ここ数年では不祥事の影響もあり、不動産業への金融機関の審査は厳しくなったと言われていますが、それでも実は高い水準を維持しています。金融機関にとって、貸出先確保は非常に重要です。そんな中、担保を設定しやすく、また、長期の融資によって貸出金利が高く設定できる不動産業、そして、住宅ローンは依然として必須事業なのです。
日本銀行が発表しているデータによると、国内銀行の貸出残高に占める住宅ローン、不動産業向け融資の割合は、住宅ローンが高水準横ばいを維持する中で、不動産業向け融資の割合は増加しています。
国内銀行・信用金庫共に、不動産を軸とした融資に依存していることが読み取レます。
【平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査】
2018年3月20日、国土交通省が「平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査」を発表しました。同調査は国土交通省が住宅ローンを提供している、ほぼ全ての民間金融機関にアンケート調査を行ったものです。その調査結果からは、民間の金融機関が行った住宅ローンの貸出額や契約に至ったローンの金利タイプの割合など、住宅ローンに関する様々なデータを得ることができます。
中古住宅向け新規貸出額が増加している
昨今では中古住宅市場の価値が見直され、人気が高まっていますが、同調査にはその中古住宅市場に関して調査した「中古住宅向け新規貸出額の推移」と言うデータが含まれます(2011年以降のデータのみ)。このデータによると、この数年の傾向としては中古住宅需要が高まっているとも言えます。
新築住宅向け新規貸出額との比較
一方、新築住宅向け新規貸出額は中古住宅向けと比べると、貸出額の継続的な増加は見られませんでした。ただし実際の貸出額に注目してみると、中古住宅向け貸出額との差は依然として大きく、以前需要はこちらが大きいと言えるでしょう。また、ここで比較している2011年以降というと、リーマンショックの影響がまだまだ響いており、一時的に新築から中古住宅に需要が傾いていた時期という見方もできます。